π分子複雑性の追及が紡ぐ機能科学 学術変革領域研究(A)

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代表挨拶

分子の構造の精緻さや多様性を表す言葉に、molecular complexity があります。官能基の種類や結合様式、対称性、立体構造といった要素が、その複雑性を形作っています。しかし、分子の光機能や電子機能に目を向けたとき、鍵となる複雑性の本質は大きく異なります。本領域では、これを新たに「π-molecular complexity(π分子複雑性)」と捉え、独自の階層的アプローチにより、新たな分子機能の開拓と技術の進化に挑戦します。

本領域に関心を寄せられる皆様の多くは、新奇な、あるいは unusual なπ分子に魅了される方々ではないでしょうか。これまで、unusual なπ骨格の創製化学は世界的に広く展開され、我が国も、かつて野副鐵男博士が拓いた非ベンゼノイド芳香族の化学を端緒として、この分野に大きな貢献を果たしてきました。しかし、特異な構造や物性をもつ分子が数多く生み出される一方で、それらが機能の観点から真に卓越した存在となることは、決して容易ではありません。それでもなお、たった一つの秀逸な機能性分子の登場が、既存の分子技術に新たな局面をもたらし、未踏の機能科学を切り拓く原動力となることも、私たちは確信しています。本領域では、そうした次代を切り拓く分子の創出と、その基盤となる分子デザインの学理の確立に向け、総力を挙げて挑みます。その核となるコンセプトが、階層的なπ分子複雑性の相乗的追究です。骨格複雑性、状態複雑性、機能場複雑性という3つの階層的視点から、分子機能の深化と飛躍に挑みます。単なる unusual を超え、unconventional ── すなわち、既成の枠組みを超越する独創的な機能性π分子システムを創出し、次世代のπ分子科学の礎を築いていきたいと考えています。

領域代表 名古屋大学ITbM 山口茂弘

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